“ガム”が教えてくれたモノ語り ~ジャン・プルーヴェ展に行ってきました~
こんにちは、バイヤーの中島です。
街中が秋色に染まっていくこの頃。日に日に、都心の紅葉も間近に迫っているような気配がしてきました。先日は東京都現代美術館で開催していた「ジャン・プルーヴェ展」に行ってきました。
昨年から気になっていたジャン・プルーヴェ展。ジャン・プルーヴェ(1901~1984)は家具や建築をはじめ、工業デザインなど多岐に渡るフィールドで大きな影響を与えた人物の一人です。ジャン・プルーヴェ制作の家具で言えば、アントニーチェアやスタンダードチェアはよく知られていますよね。
今回の展示でももちろん登場し、ほかファサード・パネルなどの建築部材も間近で見ることが出来ます。家具のみならず巨大な建築部材も一挙に展示される内容に圧倒されながら、僕が注目したのは写真手前ラウンド状の「ゲリドン・カフェテリア」という組立式テーブル。
この「Gueridon (ゲリドン)」は、パリの国際的な学生寮の集合地である「パリ国際大学都市」の食堂用テーブルとして制作されました。現在はヴィトラ社より現行品の購入が出来ます。
数多の展示品の中でなぜこのテーブルかというと、このテーブルの裏面には、なんとガムがくっ付いています。テーブルが使われていた1950年当時、恐らく学生寮の学生たちが噛んでいたガムを裏面に張り付けて、それがそのまま時代を越えて、現在に至っているのだと思われます。
オーナー達のもとに渡っていく中、オーナーや補修師たちが“ガム”も歴史の痕跡として残そうと、剥がさずそのままにしていたようです。フランス人のとても粋な計らいですよね。ガム=歴史として捉えるというのは、扱われてきた物のありのままを尊重してこそかもしれません。
このゲリドンに限らず、アンティーク・ヴィンテージ品にはこれまでどう使われてきたか、その痕跡が残っていることは多いんです。ユーズド品を眺める際はぜひ、物が辿ってきた“足跡”を探してみてください。
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